【洒落怖】貶目喰未(おとしめぐま)

小学六年生の夏休み。

僕はじいちゃん(祖父)と2人で山にキャンプに行くことになりました。
キャンプと言っても、ちゃんとしたキャンプ場に行く訳ではなく、じいちゃんの持ってる山で、テント張って、飯作ったりしてっていう感じ。

キャンプ当日。

僕はじいちゃんの背中を追いかけながら山を登って行きます。
しばらく登ると、少し開けた場所に出ました。
そこでじいちゃんと一緒にテントを張り、荷物を一旦下ろしました。

近くにある浅い川があったのでじいちゃんに
「近くに、浅い川あるけん。そっちで遊んでくる」
と言って僕は川に向かいました。

裸足で川に入り、川の中の石とか、ひっくり返して、ひとつのものが目に入りました。
向かい側の川岸に大きな木があるのですが、そこに、獣がつけたような×の形の爪痕があったんです。
まぁ結構な山奥なので、クマでもいるのかな?と思い、一応じいちゃんに伝えることにしました。

「じいちゃん。あっちの木にさ、でっかい爪痕があったんよ。」
というと、じいちゃんはケラッと笑って、
「クマでもいるんだろうな笑。まぁヒグマでもあるまいし、熊よけもあるから、大丈夫だろ」
少し爪痕で怯んでいた僕ですが、気楽なじいちゃんの性格に救われたんです。

その後はじいちゃんと火を起こし晩飯を食い、テントの中で寝ることにしました。

その日の夜。

「……おー……おー」
という、動物の鳴き声と、人のうめき声の中間のような声が聞こえ、目が覚めました。
体を起こすと、あたりは真っ暗なのですが、隣で寝ていたじいちゃんは、既に起きていたそうです。

「……じいちゃ、……」
と言おうとした時にじいちゃんに口を手で塞がれました。
するとじいちゃんは、小さな声で、

「○○(本名)、昼に爪痕を見たって言ったな。あれ……どんな形だった?」
僕が、
「えっと……×の形だった。もしかして、クマとか?」
と、答えるとじいちゃんは、深いため息をついて、
「やっぱりか……クマなんて可愛いもんじゃねぇ。
……クッソ。今日は友引の日だった。最近はなかったのに……」

僕が、「じいちゃん?」と、尋ねると、じいちゃんは、
「いいか。今から山を降りる。荷物は明日取りに来る。もし途中で何かを見ても、決してでかい声を出すんじゃない。いいな?」
と言って、自分のカバンから猟銃を取り出しました。

じいちゃんは、猟銃の免許をもっていたのですが、いつもお気楽なじいちゃんとは思えないくらいに真剣でした。
そこからじいちゃんの懐中電灯の光を頼りに、山を降りました。

しかし、降りる途中、
ズリ……ズリ……
と何かを引きずるような音が聞こえます。

するとじいちゃんが、
「止まれ。」
と言って足を止めました。

その瞬間、僕は自分の口をサッと塞ぎました。
そうでもしないと、叫んでしまいそうだったから。

僕の目に写ったのは、クマくらいの大きさの、ナマコみたいな形をした、肉の塊のような生き物、そして、人間の眼球のようなものが3つ埋め込まれたように露出している。
さらに肉片から腕が伸びていて、×の形の爪がある。

人生の中で、異形と言う言葉が合っている奴は、これまでもこれからもコイツだけでしょう。
そして、ソイツの近くには、血を吐いたイノシシが倒れています。
そして、その肉片の化け物はイノシシの頭に覆いかぶさったと思うとズルズルと、イノシシが肉片の体に引きずり込まれていきます。

ドラゴンボールでしか見たことないような吸収方法に、吐きそうになったのですが、じいちゃんは、
「そういう事だ。ああなりたくなかったら、我慢してくれ」
と言って懐中電灯の明かりを消し、足早に山を下って行きます。

5分くらい、周りの枝で怪我をしながらも、息を切らせながら、じいちゃんの背中を追いかけていきます。
すると、僕の頭上に、ビチャっと液体のような、重量のあるものが落ちてきました。

僕が上を見ると、木の枝上にさっきの化け物が張り付いています。
3つある目でこっちを見下ろしながら、
「……おー……おー……」
と、いう鳴き声をあげています。

僕が耐えきれず、叫び声をあげると、それに気付いたじいちゃんは、「クソっ!!」と言って猟銃を構え、その化け物に向かって、打ちました。
パンッ!!と言う大きな音がしたかと思うと、僕はじいちゃんに手を引かれ、山を下って行きました。

次の日、荷物を取りに山に戻りました。
山を登る途中、僕は気になっていた事をじいちゃんに聞いてみました。
「なぁじいちゃん。昨日のあれって、何だったん?」
と聞くと、

「ワシの……友人だったもの……」

僕が、「え?」と聞き返しますが、それ以降は話をしてくれません。
結局は詳しくは分からなかったのですが、次は、ちゃんとしたキャンプ場に行きたいものです。

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この怪談の著者

怖い話書いてる高校生

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