【洒落怖】吊り橋で肝試し

私が都内の高校に入学する前、中学時代を過ごしたのは山陰の山奥にある小さな田舎町だった。
そこは近くのコンビニまで自転車で20分もかかるような、文明から取り残されたような場所だったのだ。

ある日、中学の終わりが近づいていた。受験も終わり、あとは卒業式を残すのみとなっていた頃、友人のAが言い出した。

「中学も最後だし、何か思い出作らねえか?」

すると、BとCも賛同した。
そして、私もその場の雰囲気に流されるように頷いていた。

数日後の土曜日、私たち4人は山奥にある吊り橋へと向かった。
自転車で1時間以上かかる、舗装されていない道を進む。
薄暗い林の中、今にもお化けや幽霊が飛び出してきそうな不気味な雰囲気が漂っていた。

吊り橋に着くと、Aが提案した。

「1人ずつ奥まで行って、帰ってくるってのはどうだ?」

BとCは乗り気だったが、私は怖くて躊躇していた。
すると、Aが言ってくれた。
「じゃあ、俺と一緒に行くか?」
私は安堵し、Aと一緒に行くことになった。

この吊り橋は、自殺や殺人が多発することで地元では有名な場所だった。
私たちはジャンケンで順番を決め、最初にCが橋を渡っていった。

10分経っても、Cは戻ってこない。

「次は俺の番だ。俺が見てくる」とBが言い、橋を渡っていった。
しかし、20分が過ぎてもBは戻らず、Cの姿も見えない。

「みんなで探しに行こう」というAの提案に、私も恐る恐る頷いた。

吊り橋の上に立つと、夜風が不気味に橋を揺らしていた。
薄暗闇の中、私たちは必死にCを探した。だが、橋の奥までくまなく探しても、Cの姿は見当たらない。

すると、Bが言った。
「もっと奥まで行ってみようぜ。この先に、古い神社があるんだ」

Aも同調し、私たちは不安を抱えながらも、神社を目指して歩き出した。
そのとき、私のスマホが鳴り響いた。恐る恐る画面を見ると、Cからの着信だった。

「もしもし…?」私は震える声で応えた。
「みんな、どこにいるの!? 私、吊り橋を渡ったら急に橋が崩れ落ちて、迂回してここまで来たんだけど…!」Cの声は動揺に満ちていた。

私とAは愕然とした。私たちは確かに吊り橋を渡ったはずなのに、Cの話では吊り橋はもう存在しないというのだ。

混乱しながらも、Cの指示通りに迂回して元の場所に戻ると、信じられないことに、そこには吊り橋の姿は無かった。
Bは無言のまま、まるで私たちを避けるかのように歩いていた。

何とかCと合流を果たし、ほっと胸を撫で下ろしたその時、今度はAが不安げな声を上げた。
「おい、Bはどこだ…?」
するとCが、不思議そうな顔で言った。

「B? Bは今日、コロナにかかって来られなくなったんじゃなかったっけ?」

私は絶句した。

「えっ…? でも、私とAが吊り橋を渡る前に、Bが先にCを探しに行ったんだよ…?」

AもCも、顔を青ざめさせて黙り込んだ。私たちは恐ろしい事実に気づいたのだ。
Cが吊り橋を渡った時点で、橋はすでに崩壊していたはずなのに、Bがその後を追ったというのは、一体どういうことなのか。
私とAが一緒にいたBは、幻覚だったのか、それとも…。

後になって確認すると、吊り橋は完全に崩れ落ち、自転車は3台しか残っていなかった。

そして、本物のBは自宅療養中だったのだ。

もしかしたら、あの”Bじゃないナニカ”は、私とAを闇の淵へと誘おうとしていたのかもしれない。

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