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【都市伝説】頭部発見師の資格試験

頭部発見師資格試験という看板が、街外れの雑居ビルに貼られている。
受験条件は年齢不問、受験料は3,333円と書かれた下に、電話番号らしき数字が滲んでいる。
近隣住民の話では、夜になるとビルの階段に列ができるらしい。
ただし翌日には、列をなしていた人々が一人残らず姿を見せない。
床に微かな足跡だけが残り、その足跡がやけに大きさや形状を変えているという噂だ。
面白半分に、その試験を受けようと決意した青年が、その電話番号に電話をかけた。
電話を切り終えた直後から、彼の様子は一変した。
今まで陽キャの塊と評されるほどだったのに、それ以降、まるで人が変わったかのように無口になり、何を聞かれても曖昧に返事するようになっていたという。
そして試験当日、その青年は例のビル階段に整列しているところを、友人が見かけたのを最後に、姿をくらました。
代わりに、ビル横のゴミ捨て場に彼の名前が刻まれた“合格者証書”が落ちていたそうだ。
通報を受け、警察もそのビルに踏み込んだが、誰もいない空きフロアに破れた手袋と塗料のような赤い液体が散乱していたとのこと。
なぜか手袋の中には何本もの指先跡が刻まれ、まるで多人数が一つの手袋を共有したように見えたという。
ビルはその後、所有者不明という理由で取り壊しが決まったが、重機のエンジンが3回連続で故障し工事は中断。
周辺の住民が夜中に耳を澄ますと、カリカリと塀をひっかく音や、何かを挽き潰すような低い振動を感じるそうだ。
そして今でも尚、頭部発見師資格試験の看板は朽ちないまま壁に貼り付いている。

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