母方の家は「猫憑き」だと母に聞かされたが、いつもは冗談だと笑っていた。
ある日、実家の押し入れを整理していると、埃まみれの古文書が出てきた。
母に問いただすと、大昔に化け猫を退治したとかで、そのとき一族に呪いじみた“猫の魂”が宿ったという。
その化け猫の恨みか、一族には代々「人ならざる猫の影」がついて回るらしい。
気味悪く思いつつも、証拠が何もないのでただの迷信かと思っていた。
だが先週、深夜に廊下を歩いていたら、自分の後ろからカサカサと柔らかい足音が追ってきた。
振り返っても何もおらず、立ち止まるたび足音だけが確かに近づいてくるのだ。
怖くて母に電話すると、「ああ、それもう来たのね」と吐き捨てるように言われた。
どうやら母方の血筋に一度でも触れると、その影が次の“宿”を探しに来るという。
さらに母は「退治した猫の尻尾が、まだ生きてるらしいのよ」と言い残し、その翌日から行方を絶った。
実家に戻ると居間の襖には、猫の爪痕そっくりの引っかき傷が無数に走っていた。
しかも夜ごと足音は増え、まるで何匹もいるかのように重なり合う。
祖父の日記には「猫の首を落としたとき、尻尾がどこかへ逃げた」と記されているが、それ以上の手がかりはない。
今夜も静まり返った廊下で、背後の足音だけが凄絶に増幅している。
耳を塞いでも頭の中で鳴り響き、まるで血の通った生き物がそこにいるかのようだ。
もし本当に“猫憑き”の血が自分を選んだのなら、もう逃げられないのかもしれない。
【都市伝説】怪猫憑きの血筋
