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【都市伝説】手首民主党についての考察

手首民主党についての考察は、この街の人々が声を潜める特異な政治活動だ。
選挙ポスターには「あなたの手首を投票箱へ」と大きく書かれている。
不気味なロゴには、4本の指しか描かれていない手首のイラストが添えられている。
深夜3時、公園の掲示板に無数の紙片が貼り付けられているのを見た。
紙片には、約50人分の手形が朱色で押してあり、裏面には「開票日は近日、準備してください」と書かれていた。
翌朝、それら紙片は跡形もなく消えていたが、地面には焼け焦げたような痕がいくつも残っている。
この街の図書館で過去の議会記録を調べると、手首民主党という名の団体は昭和29年の議事録で突然に言及され、しかしページが破れ、細部が読めない状態だった。
以来、誰も手首民主党の正体を突き止められず、年に数回、例のポスターだけが貼り出され、投票日未定のまま選挙運動が繰り返されている。
不審を覚えたある住民が、ポスターを剥がそうとした瞬間、手首が引き寄せられるように動かなくなり、倒れこんだという噂がある。
投票箱の位置や投票ルールも不明瞭だが、街では毎年、どこかの家で手首だけが失踪する事件が2件ほど起きている。
唯一の手がかりは、古い市議名簿に残る赤い手形だ。
それを見た町役場職員が「指の数が足りない。それでも投票するのか」と呟いた。
街の人々は、彼らが公務員や一般市民に紛れ込んでいると信じている。
どこかで誰かが手首を落とした時、その票は確定するらしい。
誰もその後始末を見た者はいないが、路地裏には常に小さな燃えかすが転がっている。

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