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【都市伝説】消えた一日

ある日突然 この街の歴史から一日だけが消えると噂されている 「消えた一日」が出現すると その当日はどの新聞や記録にも載らず まるで空白のように扱われる ただし ごく一部の人は 「消えた一日」を体感できるらしい その日を過ごした者は 翌日に混乱を覚える なぜなら 周囲の人々や公的機関は その日の存在を否定するからだ 自分が確かに過ごした時間が 誰にも認識されないまま消えてしまう

奇妙なのは 毎年決まった日ではなく 不定期かつ突発的に起こる点だ ある年は八月二十二日 別の年は三月四日 まったく統一性がない だから 誰もその日がいつ消えるのか予測できない そして 存在しない一日を 密かに調べている組織があるという 自称「消えた一日協会」だ メンバーは 自ら「消えた日」を体験した者ばかり 不気味なほど黙々と集まり カレンダーの痕跡をひたすら探すらしい

主人公は この協会に接触した際 衝撃的な話を聞かされる 彼らが守ろうとしているのは 「消える理由」そのものだという つまり わざとその日を歴史から消し去ることで 何か大きな災厄を回避しているらしい もし全員が 「存在した日」を完全に記憶してしまえば 不吉な出来事が起きると 協会は主張する 主人公は最初信じなかったが 協会関係者の眼差しからは 不可解な強迫観念を感じ 次第に口を閉ざさざるを得なかった

では その災厄とは何か 真相を知る前に 主人公はある朝 ふと目を覚ました瞬間に気づく 昨晩まで確かに月日が進んでいたのに 今日はなぜか昨日と同じはずの日付が すでに経過している しかし 誰に訊いても「昨日はそんな日付ではない」と言い張る スマートフォンの履歴も狂い 日記のページは真っ白に抜け落ちている

そのとき主人公は 協会の人物から一通のメモを受け取った 「あなたは 消えた日を認知しましたね これ以上知るなら あなたも歴史から外れていきます」 薄暗い路地で開いたメモには 次の消失予定日が書かれていたが 読もうとした途端に文字が溶けるように消え 代わりにページ全体が真っ黒になったという あの日付が何だったのか 今も主人公は思い出せない
ただ 自分が過ごしたはずの一日が 歴史の闇に葬られた痛みだけが残るのだ

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