パソコンで家系図を整理していた一家が、奇妙な事実に気づいた
祖父母と孫を結ぶ線が、なぜか画面から浮き上がるように見え、妙な胸騒ぎを覚えて図書館へ向かった
古い棚の隅で発見した大型の系譜書には、不自然な空白が連続しており、そこに鉛筆の痕跡が微かに残っている
どんなに目をこらしても文字は読みとれず、なぜかページをめくるたびに、自分の出生や家族の顔が思い出せなくなる
一家の長男は「明らかにおかしい」と呟き、系譜書を閉じるが、ほんの数分後には“長男”という存在そのものを家族が忘れてしまった
本を戻し、慌てて帰宅しても遅い
家系図の画面上から当たり前に存在したはずの兄の名前だけが消え、代わりに見慣れない人物が書き加えられている
その人物の欄には「空欄」と記載されており、さらに見下ろすと長男の写真が薄く溶け込むように変色していた
慌てて玄関に駆け込んだ次女は、家族の靴が増えていることに気づくが、どれだけ見ても誰の物か分からない
夜になり、家系図ソフトを開こうとしてもパスワードが無効化され、画面上には「あなたの代わりが確定しました」というメッセージが浮かんでいる
家族は戸惑い、急いで再度系図書を探そうと図書館へ向かうが、閉館中の館内に勝手に入るわけにもいかない
そのまま朝を迎え、戻ってきた父親が言う
「そもそも、俺たちに兄なんていなかったよな」
家族全員が頷くが、なぜか寂しさが胸を締めつける
まるで大切な何かを最初から失っているようだ
翌週、家中を捜しても唯一見つかったのは、鉛筆の痕跡に似た薄茶色の染みがついたメモ用紙だけ
そこには、「家系図を再度確認するな 空欄が増えるから」と、大きな乱雑な字で書かれていた
【都市伝説】空欄がある家系図
