MENU

【都市伝説】あなたは選ばれませんでした

紅倉区のアパートの一室に、「あなたは選ばれませんでした」と書かれたハガキが投函された。
男は最初、それを悪戯だと思い、捨てようとした。
しかし翌朝には、同じ文面のハガキが三通も投げ込まれていた。
差出人の名前はどこにも記載されていない。
まるで宛先だけが決まっている、不気味な手紙のように思える。
ハガキが増え続けるにつれ、男の周囲でささやかな変調が起こり始めた。
いつも温厚だった隣人は、笑顔の裏にどこか冷たい雰囲気を漂わせている。
通い慣れたコンビニの店員が、男を一瞬だけ見て口を閉ざす。
まるで街全体が勝手に進化しているかのように、男だけを避けて先へ進む世界がそこにあった。
駅前の工事現場は突然完成を早め、オープン日が前倒しになった。
長らく営業を休止していた喫茶店には、新メニューのポスターが貼られている。
男はふと気づく。
変わったのは、自分以外のすべてだということに。
まるで男以外のすべてが何かに選ばれたかのように、男だけが何かに取り残されたかのように。

目次
閉じる