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【都市伝説】柏原教授による、死に関するとある考察

柏原教授による死に関する考察は 既存の死の概念とは大きく異なるものだった
彼は生と死の境目を否定し 人の意識が肉体を離れても 都市の残響として留まるのだと断定した
その説を証明するため 彼は夜な夜な研究室にこもり 奇妙な図やグラフを作成していた
学生たちは教授の指示に従い 録音された謎の声を何度も解析させられた
ある時 研究室の片隅にあるモニタに 白い霧のような映像が映し出され そこから不気味な雑音が聞こえてきた
その場にいた学生の一人が 異様な疲労感を訴え倒れ込む
数日後 廃ビルの一室で 誰かの声に誘われるように集まる人々が目撃された
彼らは壁に貼り付けたメモを見つめ まるで儀式のように息をそろえていたという
翌朝 研究室に戻った学生たちは 教授の机に置かれた一通の書き置きを見つける
その紙には 「死とは抜け落ちることにあらず 新たな座標への埋没である」 とだけ書かれていた
だが 教授の姿はどこにも見当たらなかった
さらに奇妙なことに 椅子の上には教授の衣服だけがきちんと畳まれて置かれ 周囲には手足の爪と わずかな毛髪の切れ端が残されていただけだった
警察が駆けつけ 現場を調べても 教授の行方に繋がる手がかりは見つからない
服と爪と髪だけが まるで抜け殻のように並ぶ様子が そこには静かに残されていた
学生たちはあらゆる手段を尽くして捜索したが 教授はついに発見されなかった
その後 教授の名を口にする人々は 彼が新たな次元へ溶け込んだのだと噂する
あの不可解な研究とともに 柏原教授の姿は この街から永遠に消え去ったままである

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