霞丘区の住宅街で「家族会議コンサルティング」という張り紙が密かに出回り始めた。
連絡先として書かれた番号は何度かけても「現在使われておりません」の音声が流れるだけだという。
実際に契約したという人は一人もいないのに、不意に玄関ポストに契約書が投げ込まれている事例が相次いでいる。
契約書には「あなたの家族に必要な死期をスケジューリングします」と書かれていて、聞き慣れない専門用語らしき言葉が並んでいる。
ある男性が半ば冗談で署名して返送したところ、翌月から家族の様子に明らかな異変が起こったらしい。
普段は和やかな食卓が、やけに冷えきった空気に包まれ、誰も一言も発さないまま深夜まで時間が進んでしまったという。
さらに、机の上にはその家の家系図を模したスケジュール帳が広げられていて、家族全員の誕生日の隣に「死亡予定日」と記された欄がぴたりと並んでいた。
最初は悪趣味なイタズラと笑い飛ばそうとしたが、父親の目がどこかうつろになり、母親が翌朝から高熱を出すなど、不穏な兆候が続いたそうだ。
ある日の夕暮れ、近所の住民がその家の二階窓越しに、どす黒いシルエットを見たという。
まるで人型の影が、スケジュール帳をめくりながら誰かと話しているかのように見えたが、その時間は家族は誰一人いなかったとのこと。
次の日、父親が無言で家を出たまま行方知れずとなり、母親も倒れこんで救急車で搬送された。
しかし奇妙なことに、搬送先の病院にはカルテが存在せず、母親がそこに来た記録がまるごと消えていたとのこと。
さらに、その家の娘は友人に「私たちは来年の三月に全部終わるんだって」とLINEを送ってから失踪してしまったらしい。
その家には、壁にカレンダーのような紙が張り巡らされていて、家族のそれぞれの死期が赤いインクで記されていた。
家族ぐるみで仲の良かった吉田さんは、その母親から「早く終わってほしいものだけどね」と微笑みながら言われたのが、最後の会話となったという。
あなたの家のポストに、もし「家族会議コンサルティング」と書かれた封筒が届いたら、よほどのことがない限りは、絶対に開けないようにした方が良いだろう。
【都市伝説】家族会議コンサルティング
