一の節
霧夜(きりよ)に誘(いざな)う 欠けた石面(いしおもて)
祈りの鈴が 静かに嗤(わら)う
ひとたび名を呼び 刻(きざ)むそのとき
魂(たま)の吐息は 封じられしまま
二の節
山の寄合(よりあい)で 渡される木札
誰の生(いのち)か 誰の時(とき)か
磨かぬままでは 霧へ溶けゆく
夜毎に刻面(ときづら) 彫り直す定め
三の節
湿った袖には 帰れぬ痕(あと)が
目を逸(そ)らす村人 影ばかり長く
ほころぶ石像(いしがた)は 溢れる嘆き
言わず語らず 黄泉(よみ)を繋ぐ器
四の節
朧山衆(おぼろやましゅう)が 見張る結界
歩み誤れば 祟(たた)り燃え落ち
夜の寄合は 静かに決める
誰ぞ新しき 刻面(ときづら)の主
繰り返し
刻面の灯(とも)し 闇にこそ映え
名を渡す者は 二度とは戻らず
刻面の灯し 静かに掲げ
曖昧なる霧(きり)へ 隠すその罪