謎のDM

旧サイトより再掲
2024年3月19日 / 心霊 中編 運営より
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「もてぃす」が朗読した動画です

ある動画配信者の話。

その配信者は某動画サイトで、そこそこの知名度があり、少数ではあるんですが、結構コアなファンもいたんですよ。

中には他のSNSも全部フォローしていて、定期的に応援のDMや嬉しいコメントを送ってくる人も何人かいたんですね。

彼は本業も忙しく、すべてのDMに返信することはできなかったんですが、そういうDMを見ること自体は日々の楽しみの1つになっていたんです。

ただ、彼が受け取るDMの中に、違う意味で気になるものがあったんですよ。

DMというよりもアカウントで、なぜか文字化けしたアカウント名。投稿はひとつもありません。

そして、その文字化けアカウントからも、不定期にDMが送られてくるんですね。

ただ、それがおかしいんですよ。

毎回、単語しか送られてこないんです。

ある時は「こうすい」。

ある時は「じゅうでんき」。

ある時は「こんびに」。

という感じで、ただ1つの単語だけが脈絡もなくポンッと送られて来るんです。

最初はどういう意味か真剣に考えていたんですけど、日が経つにつれて、

「DMをメモ代わりか、そういう何かに使ってるだけなんだろうな」

と思うようになってたんですね。

そして、そのDMが送られるようになってから3ヵ月ほど経ったある夜。

仕事が終わって車に乗った瞬間、例のアカウントからDMが届いたんです。

「またこいつか」と思いながらDMの内容を確認すると、

「赤い車」

とだけ書いてあるんですよ。

その頃にはもう慣れていて、すぐに画面を閉じようとした、その時。

またポンッとDMが届いたんです。

同じアカウントから。

このアカウントからは何度もDMが送られていますが、同じ日、ましてやこんな短時間の間に連続してDMが送られたのは初めてです。

そこには、

「軽四」

とだけ書いてあります。

「何で今日は連続で2通も。しかも2通とも車のこととか、どういうメモだよw」

と少しニヤリとしながら、スマホ画面を消した瞬間。

……ん?

彼の頭の中に妙な違和感が生まれたんですよ。

「なんだ、この違和感……」

と、数秒の間、ハンドルを前に考えていたんですね。

そしてハッと、あることに気づいた次の瞬間。

【ピロン】

またDMが届きました。

同じアカウントからです。

「まさか……」

と思いながらスマホを開き、届いたDMに目を通した瞬間、背筋が凍りました。

そこには、やはり1単語だけ。

「○○○○」

とだけ書いてあるんです。

それは今までと何ら変わりません。

おかしいのは、ただ一点。

そこに書いてあるのは、彼の車の車種なんですよ。

そしてさらに、彼の乗っている車は赤い軽四です。

彼は配信者ではあるんですが、身バレのリスクもよく知っているので、自分の車をSNSなどに載せた覚えは一度もありません。

思わず彼は、バッと辺りを見回しました。

車を停めているのは、人通りの少ない道路沿いのパーキング。

辺りに不審な人は見当たりません。

彼は心臓をバクバクさせながら車をパーキングから出し、大急ぎで自宅へと向かいました。

結論からいうと、その日は無事に家にたどり着き、翌日もその次の日も、結局1週間経っても特に変わった出来事はありませんでした。

ただ、例のDMの様子が少しおかしくなっていたんですよ。

それまでは単語だけ送られてきていたんですが、あの日を境に、

「やっt」

「きetようよ」

「みつket」

みたいに、打ち損じのような文章が送られて来るようになったんです。

「kwって?」

という疑問文も送られてきていて、日常生活に支障はないといえど、さすがの彼も精神的に参ってきたんですよ。

そして彼は、視聴者やフォロワーに何も言うことなく、配信活動を一旦休止することにしたんです。

突然、活動を止めたことで、彼のことを心配するDMが結構な数来ていました。

それらのDMにはすべて目を通し、嬉しいような、申し訳ないような。

でもやっぱり、温かい気持ちになったのは間違いないんですが、その中に紛れるように、やはり例のアカウントからは、

「おそろしい」

「ずっとまってた」

「もうすぐ」

というDMが届いているんです。

しかも少しずつ、意味のある言葉に変わってきているんですよ。

もうここまで来ると恐怖の方が勝って、ついに彼はSNSを見ることも辞めてしまったんですね。

そして活動停止から2ヵ月が経ち、結局、彼の周りでおかしな事が起こるわけでもなく、平穏な日々を過ごしていました。

あのDMに対する恐怖感もすっかり薄れていて、その頃には、

「ただの嫌がらせだったんじゃないか」

「車のこともライブ配信とかで、うっかり喋ってしまっただけだろう」

と、楽観的に考えられるようになっていたんですね。

フォロワーからのDMも貯まっていて、読みたいと思っていましたし、自宅でゆっくりできる時間を見つけて、2ヶ月ぶりにSNSを開いたんです。

200件ほど貯まっていたDMは、ほとんどが心配する声や活動再開を願う嬉しいメッセージで、すべてに目を通しながら感慨深い思いにふけっていました。

しかし、想像通りというか、やっぱりというか、その中にあったんですね。

例のDMが。

しかも60通近くあるんですよ。

パッと流し見してみると、どうやら活動休止してから毎日のようにDMを送っていたようなんです。

彼は恐怖しました。

DMの内容は日を追うごとに、

「いよいよですね」

「今日は晴れです」

「新しいスマホでOKですか?」

と、意味は分からないんですが、ちゃんとした文章になってきているんです。

それだけならよかったんですが、彼が恐怖したのはそこじゃなかったんですね。

ここ1週間のDMには、

彼がよく行くスーパーの名前。

取引先の社名。

卒業した高校名。

極めつけは、彼自身の本名。

という具合に、彼のプライベートに関する情報が怒涛のように送られているんです。

「なんだ、これ……」

あまりのことに、スマホを持ったまま呆然として、しばらく身動きが取れませんでした。

これはさすがにおかしい。

というかマズイ。

嫌がらせにしても度が過ぎている。

恐怖を通り越して、身の危険を感じてきました。

手と唇が震え、全身に鳥肌が立っています。

「警察に連絡を……」

そう思い、震える手でSNSを閉じようとした、その時。

【ピロン】

DMが届きました。

開くまでもありません。

今、見ていたDMの下に、新しくメッセージが追加されたんです。

「23時に○○公園で」

それは間違いなく、彼の自宅近く、徒歩3分ほどにある公園の名前です。

「まさか住所まで知っているのか……?」

いや、それよりも、このDMは……。

彼はその画面を凝視しながら、数分間、数時間、その場で考えました。

もしかしたら、本当にただの悪戯かもしれません。

友人の度が過ぎたドッキリかもしれません。

ですが何故か彼の頭では、それ以外の何かを予感していました。

19時、20時、21時、22時……。

そして22時40分を過ぎた頃。

彼は意を決してその場を立ち上がり、玄関に向かって歩き、靴を履き、スマホだけを持って、玄関のドアを開けました。

結論からいうと、その日は無事に彼の家にたどり着き、翌日もその次の日も、結局1週間経っても特に変わった出来事はありませんでした。

まるで何事もなかったかのように配信活動を再開していますし、今、こうしてみなさんの前で話せるようになりました。

もうDMすることもありません。

新しいスマホを買う必要もなくなりました。

本当に、ありがとうございました。

怖い 2

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