これは、今から2年前の話です。
私は、いわゆる老人ホームではなく、「サ高住」と呼ばれるサービス付き高齢者向け住宅で、補助員として働いていました。
高齢の方が多く入居されているので、亡くなる方も当然多く、そうした現場では怪奇現象の話なんて山ほどあります。
でも、それはあくまで他人の体験談でしかありませんでした。
私は経験したことがなかったんです。
サ高住というのは本当に便利な場所です。
自室はしっかり確保され、自由に外出でき、共用の食堂や談話室、娯楽室などもあって、家族ともくつろげる。
ある程度お金に余裕のあるご高齢の方にとっては、一般の家に住むよりも安全で快適な生活が送れる施設です。
ただ、入居待ちは常にあり、空室が出るのは誰かが亡くなったときだけ。
つまり、ほぼ全ての部屋で“誰かが最期を迎えている”ということになります。
霊感が強い入居者の中には、「この部屋…なんかイヤね」と漏らす方もおり、施設では亡くなる度に霊媒師を呼んで除霊を行っていました。
これは私が仕事を辞めるきっかけになった話です。
その夫婦は、ふたり一緒に入居していました。
子供はいるようでしたが、ほとんど関わりはなく、いつも夫婦ふたりで仲良く過ごしている姿が印象的でした。
他の入居者とも親しく、まるでムードメーカーのような存在。
しかし、入居してから一年ほど経った頃、旦那さんの方に病気が見つかってしまいました。
そこからは早かった。わずか二ヶ月で、亡くなってしまったのです。
奥さんは、それから急に変わりました。
部屋に引きこもるようになり、食堂には来るものの、誰とも話さず、ほとんど何も食べずに帰っていく毎日。
病気でも認知症でもないけれど、まるで心を閉ざしてしまったようで、医師の判断で、問診回数を増やしていたところでした。
そんなある夜、施設の管理室に通知が届きました。
各部屋には一定時間動きがないとアラームが鳴るセンサーがあり、それが奥さんの部屋から発報したのです。
夜勤の職員が確認に行ったのですが、その光景は本当に悲惨なものだったらしいです。
奥さんは自分の身体を鉛筆とカッターで滅多刺しにしていました。
目も、腹部も、四肢も、全身血まみれで、すでに息はありませんでした。
その傍らには、納骨されたはずのご主人の骨壺があり、中身が出され、奥さんの口元には白い粉が。
半分以上、食べていたそうです。
私は話を聞いて愕然としましたが、現実的な処理も必要で、まずはいつも依頼している清掃業者に連絡をしました。
ところが、到着して30分も経たないうちに「すみません、ここ…無理です、本当にやばいです」と言われ、そのまま帰られてしまいました。
別の業者に頼んで来てもらったんですが、「清掃どうこうではなく、部屋に入るのが怖い」とまで言われてしまい、ついには清掃の前に除霊をするしかないという話になりました。
私たちはいつもお願いしている霊媒師のAさんに連絡を取り、除霊を依頼しました。
Aさんは、二人の助手を連れてやって来て、すぐに儀式を始めました。
1時間ほど経った頃、Aさんが眉をひそめて言いました。
「強いですね。払いきれません」
職員のひとりが「奥さんの怨念なんですかね…?」と尋ねると、Aさんは首を振って言いました。
「いいえ。旦那さんの方です」
Aさん曰く、旦那さんが、奥さんを“連れて行った”と。
Aさんはクローゼットの方を指差して、こう言いました。
「あそこに、旦那さんが立っています。奥さんはもう、ここにはいません」
その日はできる範囲で除霊をしてもらい、翌日、何でも屋に来てもらい、清掃を終わらせてもらいました。
けれど、それで終わりではありませんでした。
その後、入居者や職員の間で、ある噂がささやかれるようになったのです。
「部屋の前を通ると声がする」
「鍵を閉めてあるはずなのに、部屋が開いている」
「生臭い匂いがする」
私は声は聞こえませんでしたが、確かに何度も鍵が勝手に開いていたことは覚えています。
これ以上怖い思いをさせてはいけないと思い、再びAさんに除霊の依頼をしようと電話をかけました。
しかし、出たのは助手の方でした。
次はいつ来られるかと尋ねると、長い沈黙のあと、ぽつりと返ってきたのは予想もしない言葉でした。
「…Aは、○月○日に急死しました」
それは、あの部屋の除霊を初めて行った、翌日のことでした。
死因は不明、亡くなった状況も少し変だったらしく、周りにはあまり話していないと助手の方は言っていました。
詳しく聞こうとしましたが、返ってきたのは、たったひとことだけ。
「あの部屋は、もう使わないでください」
それ以来、その部屋は倉庫という名目で使われてはいますが、入居者はもちろん、職員もなるべく近づこうとはしません。
そして、私は仕事を辞めました。
今は、当時の職員もほとんど残っておらず、現在の状況は分かりません。
提供:はなこ 様
これは、私が小学生から中学生に掛けて体験した話です。 小学6年生のある日、母が家の前でママ友といつものように長話をしていました。 何でもかんでも気になる年頃…
「お葬式のとき、火葬場への行きと帰りは同じ道を通らない」 皆さんもそんな話を聞いたことがあるのではないでしょうか。 これは、僕が中学生の時の体験です。 母方…
あれは、小学五年の夏休みのことだ。 父方の祖父は、日本の端の小さな島に住んでいる。船で渡るその島は、電波もろくに入らない。都会の喧騒から切り離された、静かす…
とあるライブハウスで働いていた時のこと。 華やかなアーティスト達の演奏を彩る照明担当として働いており、演奏者達の魅力をより高める為のその仕事に誇りを持ってい…
コメント0 件