配信タイトル:【全員集合!】ついに『アノ場所』へ突撃します!!
[配信開始]
画面には、夜の街を歩くもてぃすの姿が映る。背後には、冥ヶ崎中央区のシンボルである駅前の高層ビル群が、霧に包まれながら聳え立っている。
もてぃす: 皆さん、こんばんは! もてぃすです! 今日は… えー、ついにこの場所に来ちゃいましたね…。
軽く息を切らしながら、もてぃすは正面のビルを指差す。それは「冥ヶ崎セントラルタワー」という、築20年ほどの中規模オフィスビルだ。
もてぃす: そう、ここが最近噂の… あの… 「幽閉階」があるってウワサされてるビルなんですよ…。
コメント欄は、「マジで行くんかい」「やめとけー」「空回廊に繋がってるぞ」といった書き込みで瞬時に埋め尽くされる。
もてぃす: いや、ホントは俺もビビってるんですけどね…。でも、皆さんの期待に応えたいじゃないですか! それに、もしかしたら何かヤバい真相が… って、ちょっとワクワクもするんですよね。
少し強がって見せるもてぃすだが、声のトーンは明らかに上がっている。
[ビル内部へ]
自動ドアをくぐり抜けると、そこは静まり返ったエントランスホールだった。大理石の床は薄暗く、受付カウンターには誰もいない。奥のエレベーターホールから、かすかに機械音が響いてくる。
もてぃす: うわ… なんか、もう空気が重いですね…。誰もいないのに、人の気配がするっていうか…。
もてぃすは辺りを見回し、スマホのライトで照らしながら慎重に進んでいく。
[階段で上層階へ]
エレベーターホールに着くと、もてぃすは一瞬立ち止まった。エレベーターは3基あるが、そのうち1基は停止ボタンが点灯しておらず、稼働していないようだ。残りの2基も、不規則に上下を繰り返している。
もてぃす: ん? エレベーター… 1基止まってんのかな? それに、なんか動きがおかしい…。
コメント欄では、「故障中とか?」「もてぃす、もう帰ろう」「エレベーター乗ったらダメだ」といった声が上がる。
もてぃす: あー、皆さん心配してくれてありがとうございます! でも… エレベーターはちょっと怖いので、階段で上がってみようと思います!
少しの沈黙の後、もてぃすは非常口のドアを開け、薄暗い階段へと足を踏み入れた。
[静寂に包まれたフロア]
階段を上り始めて数分。もてぃすは息を荒くしながら、10階へと到着した。
もてぃす: ふう… 結構キツいですね…。 でも、10階はまだ普通のオフィスフロアみたいですね。
スマホのライトで周囲を照らしながら、もてぃすはフロアの様子を映し出す。そこは一般的なオフィス空間だが、すべての部屋の照明が落とされ、人気は全くない。デスクの上には書類やパソコンが放置されたまま。
もてぃす: ここも、テナントは入ってないんですかね…? でも、まだ新しいビルなのに…。
もてぃすは廊下を歩きながら、各部屋の様子を覗き込んでいく。いくつかの部屋では、カレンダーが数ヶ月前のままで止まっていたり、コーヒーカップが飲みかけのまま放置されていたりと、まるで時間が突然停止したかのような光景が広がっていた。
[異質な空間へ]
さらに階段を上り、11階へ。扉を開けた瞬間、もてぃすは息を呑んだ。
もてぃす: え…? ここ… 何…?
そこは、10階までのオフィスフロアとは全く異なる空間だった。
●壁はコンクリート打ちっぱなしで、ところどころに錆やカビが生えている。
●照明はほとんどなく、薄暗い蛍光灯が数本点滅しているだけ。
●廊下は狭く、奥行きが見えない。
●空気は澱んでいて、生臭いような、埃っぽいような、独特の匂いが漂っている。
もてぃす: これ… マジで “幽閉階” なんじゃ…。
[謎の落書き]
恐怖と好奇心に押し潰されそうになりながら、もてぃすはゆっくりと廊下を進んでいく。壁には、ところどころにスプレーで描かれた落書きがある。
もてぃす: え… これ… 「空回廊」…?
落書きは、一見すると意味不明な記号や図形のように見えるが、よく見ると漢字やアルファベットで何かが書かれているようだ。
もてぃす: 他の壁にも… これ、全部… 同じような落書き だ…。
[配信終了]
廊下を進むにつれて、落書きはますます複雑化し、不気味さを増していく。やがて、もてぃすは廊下の突き当たりに、鉄製の扉があるのを発見する。
もてぃす: あれ… 扉…? 奥に… 何か… ある…?
その瞬間、背後からかすかな物音が聞こえ、もてぃすは慌てて振り返る。 しかし、そこには何もない。
もてぃす: …気のせい… かな…?
動揺を隠せないもてぃす。明らかに恐怖を感じている様子だが、好奇心の方が勝っているようだ。
もてぃす: ちょっと… 皆さん… ここ… かなりヤバいかもしれないです…。
もてぃす: 今日は… ここまでに… します…。 次回… また… 来ます…。
そう言い残し、もてぃすは急ぎ足で階段を下りていった。配信はそこで唐突に終了する。
[配信後]
視聴者たちは、もてぃすが最後に見つけた扉の先に何があったのか、そして背後から聞こえた物音の正体は何だったのか、様々な憶測を巡らせる。
そして、もてぃすは、この配信をきっかけに、冥ヶ崎中央区に隠された秘密、そして「空回廊」の真相に、深く関わっていくことになるのだが… それはまた別の話である。