顔だけが白い人

旧サイトより再掲
2024年5月22日 /  短編

私は母と犬と平屋に暮らしている。

去年の夏のことだ。母が急病で県外の病院に入院することになり、母の父、つまり私の祖父が私の面倒を見るためにやってきた。

母の実家は「出る」家だと聞いている。

その影響なのか、母は霊感が強く、霊現象に関してはかなり敏感だ。

母の入院中、私は一人でリビングの横にある和室を使って、遅くまで勉強する日々を送っていた。

その日も、いつものように勉強をしていた。

一通りやることを済ませ、お風呂に入るため、廊下の突き当たりにある風呂場に向かった。

そのとき、風呂場の左側にある物置の扉が開いていることに気がついた。

ふと目を向けると、そこに見えたのだ。

まるでモノクロ写真のように、体は真っ黒なのに、顔の部分だけが白く浮かび上がっている人影を。

その人は正面を向いていたわけではなく、私からは横顔しか見えなかった。

だが、霊感のない私でもはっきりとわかった。この世の人ではない、と。

その日は、すぐにお風呂を済ませて早く寝た。

しかし、次の日から異変が起き始めた。

夜、勉強をしていると、突然パチパチと音がするようになった。

部活やテストで疲れていた私は、あの人影を見てしまったことなど頭になく、その不可解な音も家鳴りだと思っていた。

だが、次の日もその次の日も、同じような音が鳴り続けた。

そんな不可解な現象が続いていたある夜のこと。

突然、リビングの方の窓からコンコンとノック音が聞こえてきた。

不審者だったら嫌だと思い、息を潜めていると、今度は私がいた和室の方の窓がコンコンとノックされた。

えっ、と思って窓の方を向いた瞬間、ガタガタガタッと和室だけが、まるで地震が起きたかのように揺れ始めた。

恐怖に襲われ、私はリビングへと逃げ込んだ。

しかし、揺れはすぐに止んだ。

地震だったのだろうか。

確かめるためにテレビをつけてみたが、そのような情報はない。

怖くなった私は、携帯でも調べてみたが、やはり地震の情報は見当たらなかった。

それからは、外から子供の声がしたり、物置からドンッと何かが落ちるような音が聞こえたり、女の人の声が聞こえたりと、現象は増えていくばかりだった。

睡眠もなかなか取れず、体調も崩しやすくなっていた。

そんなある日、祖父が一度自宅に戻らなければならないということで、姉が代わりに来てくれることになった。

私には年の離れた姉と兄がいて、いつも私のことを気にかけてくれていたのだ。

姉がやってきたのは、夜の10時過ぎだった。

私は、今までの現象を全て姉に話し、もう無理だと訴えた。

姉は、兄にも相談してみるから、一緒にお祓いに行こうと言ってくれた。

ほっとして、もう大丈夫だと思っていたその時、突然、普段母と一緒に寝ている寝室にある目覚まし時計が鳴り始めた。

その目覚まし時計はデジタル時計。

アラームは時間を設定して、その時間に鳴るようにセットしないと鳴らないはずだった。

しかも、母が入院していて不在の間は、アラームの設定も切ってあった。

背筋が凍るのを感じた私は、一人でそれを止めに行くのが怖くて、姉を引き連れて寝室へと向かった。

その夜は、寝室ではなく別の部屋で眠ることにした。

次の日、兄から連絡があり、少し離れた神社でお祓いをしてもらうことが決まった。

安堵感に包まれながら学校へ向かったが、階段を登っていた時、突然誰かが私の服の裾を引っ張っ

だ。踏み外しそうになったが、咄嗟に手すりを掴んでなんとか踏みとどまった。

友達の仕業だと思い、後ろを振り返ったが、そこには誰の姿もなかった。

もう限界だった。その場で兄に連絡を取り、すぐにでもお祓いに行きたいと頼み込んだ。

兄は予定を調整し、週末に行けるように手配してくれた。

週末、お祓いに訪れた私を見て、和尚さんが淡々とした口調で「居ますね」と言ったのを覚えている。

お祓いを受け、塩とお守りをもらって家路についた。

お祓いの後は、すごく気持ちが楽で、体も軽くなった気がした。

その後、母も退院し、家での怪奇現象もぴたりと止んだ。

以降は充実した日々を送れるようになった。

ただ、懸念点が1つだけある。

あれから一年が経った今、ふと覚える違和感。

帰宅途中の私の後ろを、ヒタヒタとついてくる気配。

振り返っても誰もいないため、気のせいだと思いこむようにしているが。

あれは一体、何なのだろうか。

怖い 2

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